こんにちは。北村歯科医院 院長の北村聡一です。
「硬いものが食べにくくなった」「お茶を飲むときによくむせる」「最近、滑舌が悪くなった気がする」—。
もしあなたが50代を迎え、これらのささいな「口の衰え」を感じているなら、それは**「口腔機能低下症」やその手前の段階である「オーラルフレイル(口の虚弱)」**のサインかもしれません。
「年のせいだから仕方ない」と放置していませんか?
実は、この口の衰えを放置すると、全身の健康、ひいては要介護状態になるリスクを高めてしまうことが、近年の研究で明らかになっています。
今回は、50代の女性の皆さんに、気づきにくい口腔機能低下症の初期症状と原因、そして、今すぐ始められる予防・対策について分かりやすくお伝えします。
1. オーラルフレイルとは?「口の衰え」が全身に及ぼす影響
「フレイル」とは、加齢に伴い心身の活力が低下し、要介護状態になる危険性が高まった状態を指します。
そして、そのフレイルの入り口として、最初に現れるのが**「オーラルフレイル(Oral Frail)」**です。これは、ささいな口の機能の衰えのことで、そのまま放っておくと「口腔機能低下症」へと進行してしまいます。
例えば、少し硬いものが食べにくくなった、滑舌が少し悪くなった、という程度のわずかな変化から始まります。
「たかが口の衰え」と侮ってはいけません。
口の機能が衰えると、まず食事から摂取できる栄養が偏り、全身の筋力低下(サルコペニア)を引き起こします。さらに、飲み込みがうまくいかずに誤嚥(ごえん)性肺炎のリスクが高まり、最終的には寝たきりや要介護状態に繋がる負の連鎖が始まってしまうのです。
50代は、この衰えに気づき、対策を始めるチャンスだと心得てください。
2. 要注意!口腔機能低下症の初期症状7つ
口腔機能低下症は、以下の7つの機能のうち、3つ以上の項目で異常が認められた場合に、歯科医院で正式に診断される病名です。(2018年に保険適用となりました。)
日々の生活の中で、以下のような変化がないかセルフチェックしてみましょう。
特に50代の女性に多いのが、**「口腔乾燥(ドライマウス)」と「低舌圧(舌の力の低下)」**です。ホルモンバランスの変化などにより唾液が出にくくなったり、舌の筋力が衰えたりすることが原因です。滑舌が悪くなったり、飲み込みにくさを感じたら、要注意のサインです。
3. なぜ衰える?口腔機能低下症の主な原因
口腔機能が衰える原因は一つではありませんが、50代以降で特に大きく影響するのは以下の要因です。
1. 加齢による筋力の低下
全身の筋肉と同様に、舌や唇、頬など口周りの筋肉(表情筋や咀嚼筋)も加齢とともに衰えます。特に舌の力は、飲み込みや発音に直結するため、低下すると一気に機能が低下します。
2. 歯の喪失や噛み合わせの不具合
むし歯や歯周病などで歯を失うと、噛む力が低下します。また、入れ歯や治療済みの歯が合わなくなっている状態も、噛む力を低下させる大きな原因となります。
3. 生活習慣の変化(会話の機会減少など)
退職や子どもの独立などにより、社会的な交流が減ると、おしゃべりする機会も減ります。会話は、実は口周りの筋肉を鍛える重要なトレーニングです。会話の減少は、機能低下を加速させます。
4. 服用している薬の副作用
高血圧やアレルギーの薬など、常用薬の中には、副作用として唾液の分泌を抑制し、口腔乾燥を引き起こすものがあります。
4. 今日から始める!口腔機能低下症を防ぐ対策
口腔機能低下症は、早期に発見し、適切なトレーニングを行えば改善が可能です。歯科医院での専門的な指導に加え、自宅でできる対策を毎日続けましょう。
1. 舌の力を鍛える「あいうべ体操」
口を大きく動かし、「あー」「いー」「うー」「ベー(舌を下に突き出す)」と発声するだけの簡単な体操です。1日30セットを目安に行い、舌の筋肉(舌圧)を鍛え、飲み込みや滑舌の改善を目指します。
2. 唾液腺マッサージで乾燥を防ぐ
唾液腺を刺激して唾液の分泌を促します。
- 耳下腺:耳の前、上の奥歯あたりを優しくマッサージ。
- 顎下腺:あごの骨の内側の柔らかい部分を、指で数回押す。
- 舌下腺:顎の真下を両手の親指で優しく押し上げる。
3. よく噛んで食べる習慣をつける
早食いをせず、一口20〜30回を目標によく噛んで食事をしましょう。噛む刺激は、唾液の分泌を促し、脳の活性化にも繋がります。
最後に
50代は、心身の健康状態が大きく変化する時期です。ささいな口の衰えを見逃さず、「オーラルフレイル」の段階で気づき、対策を始めることが、10年後、20年後の「食べる楽しみ」と「豊かな人生」を守ることに繋がります。
当院では、口腔機能低下症の専門的な検査と、患者さん一人ひとりに合わせた改善トレーニングの指導を行っています。
少しでも気になる症状があれば、「年のせい」と諦めずに、ぜひ一度お気軽にご相談ください。私たちと一緒に、いつまでも若々しい口の機能を維持していきましょう。
北村歯科医院 院長 北村聡一 https://www.kitamurashika.jp/

