神戸市兵庫区の北村歯科医院です
12月に入りもうすぐ今年が終わろうとしています
寒さも増してきましたので皆様より一層寒さ対策をし、体調お気をつけください
今回は歯周病の治療を進めていく中で、「歯周外科が必要です」
と言われることがあります。なぜ必要になるのでしょう?
このことについて説明していきたいと思います。
・歯周病の検査について
歯周病について客観的に数値化するために用いられるのが歯周基本検査
と言われる、歯と歯ぐきの間にある歯肉溝(歯周ポケット)の深さを測る
検査があります。もっと詳しく検査を行うと歯周精密検査といわれるものになります。
歯の健康な場合や軽度の歯肉炎の場合、歯周検査の値は、1ミリから2ミリとなります。
中等度の歯周病となると3ミリから4ミリ
重度の歯周病となると5ミリ以上 の骨欠損の値となってきます。
・汚れの取れるのはどこまで
軽度の歯肉炎の場合の 1ミリから2ミリの場合、
歯ブラシをゆっくり丁寧に歯と歯ぐきの間に当てることで
歯肉溝に入った汚れをかき出すことができます。
中等度の歯周病の場合の3ミリから4ミリの場合、
歯科医院で歯科衛生士がスケーラーいう歯石をとる機械を使って取ることが
できます。
重度の歯周病の場合、5ミリから10ミリくらいになってきますと
歯科衛生士が手用スケーラーという機械で取るのですが
非常に困難な部分がでてきます。歯茎からの出血や、
目で見えない部分になりますので取り残しが出てきやすく、
また、歯の形、非常に深い歯周ポケットによっては届かない所になります。
ここから歯周外科が必要です。
歯周外科治療とは、『手術』そして、3つの目的に分けられます。
1、 フラップ手術=汚れの徹底清掃
2、 歯周組織再生療法=崩れた土台を作り直す工事
3、 歯周形成手術=見た目の改善を主目的に、外壁を修復する
<フラップ手術>
1、 歯肉の切開
2、 歯肉を切開して歯槽骨から剥がす
3、 歯根についた歯石などを除去
4、 歯根面を滑らかに仕上げ、歯肉を元に戻して縫合する
フラップ手術とは、スケーリングやルートプレーニングの処置で取りきれなかった歯周ポケットの奥深くにあるプラークや歯石、歯肉を切り開いて綺麗にとり去ります。歯根表面をきれいに滑沢にし、歯周ポケットを浅くするための治療です。 歯周病の進行度は関係なくプラークや歯石の除去をメインにした歯周基本治療を先に行います。歯周基本治療をおこなえば歯と歯肉はくっつき、歯周ポケットを浅くすることができます。
しかし、奥深く入り込んでしまったプラークや歯石は外側から取りきれず、残ってしまい歯と歯肉はくっつきません。
フラップ手術=歯肉剥離掻爬手術
歯周基本治療をおこなっても歯周ポケットが5mm以上残って歯石が残っている場合はフラップ手術を検討します。
局部麻酔をしたのち、歯に沿って切開して歯肉を切り開き、歯根を露出させた状態にしてスケーリングやルートプレーニングします。外側からでは届かなかったプラークと歯石を綺麗に取り去ったのち、歯肉を元に戻して縫合します。フラップ手術は徹底的に清掃ができる反面、治療後に歯肉が下がって歯が長くなったように見えます。とくに前歯は下がりやすいため、リスクも十分理解した上で手術をおこなってください。
<歯周組織再生療法>
歯槽骨が吸収されてしまっている場合は歯槽骨を正す歯周組織再生療法をおこないます。 歯周基本治療やフラップ手術で歯周病の原因細菌が潜んでる汚れを綺麗に取り除いた場合、歯周組織の炎症は改善していきます。フラップ手術だけでも70% 程度は回復が見込めます。
しかし、すでに歯槽骨が吸収されるなどの歯周組織の破壊が進んでしまっている場合、汚れを綺麗に取り去ったとしても破壊された骨まで完全に回復することはありません。骨がしかっりしていなければ、歯は安定しないため、最悪抜歯になることもあります。そこで破壊された土台となる骨を作り直すために歯周組織再生療法をおこなう場合が多いです。
<GTR法とエムドゲイン法>
現在おもにおこなわれている歯周組織再生療法はGTR法とエムドゲイン法の2つの方法です。フラップ手術で歯肉を開いて歯周ポケット内にあった歯石を取り去ると、歯と接する骨の部分は溶けて隙間が開いた状態になります。歯周病の原因は除去されているため、ここ歯肉が再生されます。実は歯槽骨も再生するのですが、歯肉の増殖スピードの方が圧倒的に速いため、歯槽骨が先に再生される前に歯肉が再生されてしまい、骨が再生するスペースがなくなってしまいます。 そこで『GTR法』では人工膜で壁を作って、歯と失われた歯槽骨の間にスペースを確保します。膜で覆われたスペースは、歯肉は入り込めないため、歯槽骨が再生されます。
もう一つの『エムドゲイン法』はエムドゲインというドロリとしたゲル状のタンパク質を露出した根表面と吸収されてしまった歯槽骨に塗ります。歯肉の再生が抑制されるだけではなく、エムドゲインのタンパク質が歯根部の細胞に働きかけ、歯槽骨が再生されるのです。 どちらの歯周組織再生療法も、手術を受けた直後から始まり、個人差はありますが半年以上経過すればエックス線写真で骨の再生を確認することができます。再生した状態を維持するためには、毎日の患者さん自身のセルフケアと歯科医院での定期的なメンテナンスを受けることが大切です。
<再生治療ができない場合>
再生手術が見込まれるのは中等度まで。重度では歯槽骨の吸収が進み過ぎている場合は、骨の再生はあまり期待ができません。そして、体を切る『手術』になるため、全身状態が悪い人は受けることができません。歯周病では、重度の糖尿病や心筋梗塞など持病を持っている人が多いのですが、持病を隠して手術を受けてしまうと、出血がとまらないなどの思わぬ事故につながります。きちんと持病を伝えて、歯科医師と治療方針を話し合ってください。なお、喫煙者は非喫煙者と比べると、歯槽骨が再生しにくいことがわかっています。
タバコが、肺がんなど全身の健康上のリスクであることはご存知だと思います。
実は、歯周病にとってもタバコは有害です。
喫煙者は、タバコを吸わない人と比べると2〜8倍も歯周病になりやすいことが報告されています。
また、タバコは歯周組織の毛細血管を縮めてしまうので血液の流れが悪くなり、歯周病の治りを悪くしてしまいます。
歯周外科治療を受けた後も同じで、タバコを吸っていると治りが悪くなり、かえって歯周病の悪化を引き起こしてしまうリスクがあります。
前述した歯周外科治療の適応に当てはまっていたとしても、喫煙者の方は歯周外科治療の適応外となります。
<歯周形成手術>
歯周病では病気が進行したり治療をうけたりすることで歯肉が下がるなどの見た目に支障をきたすことがあります。歯周形成手術はこうした歯肉の見た目を手術で改善していきます。笑顔を重視する欧米では50年ほど前からおこなわれていて、日本でも広がりつつあります。見た目の悪さが患者さんの精神状態に大きな影響を及ぼしているケースもあります。歯周形成手術をおこなうことにより、笑顔に自身がつき、とても明るくなる患者さんも少なくないです。また、歯肉の形を整えることで、患者自身がおこなうセルフケアもしやすくなる効果があります。
よくおこなわれるのが、歯肉が下がり長くみえる歯を治す『根面被覆術』です。局部麻酔をして、口蓋から切断した歯肉を、歯肉が下がってしまった部分に移植する手術で、1時間ほどで終了します。ただし口蓋の歯肉が薄い人はこの治療ができません。
このように歯周基本治療では改善が見込めない場合歯周外科治療が必要となってきます。
参考資料 社団法人日本歯科医師会