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子どもの「食べる・話す・呼吸」の悩みはこれかも?「口腔機能発達不全症」の初期症状と治療

こんにちは 北村歯科医院の院長 北村聡一です

お子様が成長するにつれて、「あれ、うちの子の食べ方、少しおかしいかな?」「友達と比べて滑舌が悪い気がする」と、ふとした瞬間に不安を感じることはありませんか?

それは、もしかすると「口腔機能発達不全症(こうくうきのうはったつふぜんしょう)」という、お口の機能の発達が遅れている状態かもしれません。

この病名はまだ広く知られていませんが、子どもの健やかな成長に大きく関わる重要な問題です。特に、生命活動の基本である「食べる・話す・呼吸」の3つの機能に不調和をきたします。

今回は、北村歯科医院がこの病気の初期症状と、歯科医院で行う**具体的な治療(訓練)**について解説します。


 

1.見逃さないで!「口腔機能発達不全症」の初期症状

 

口腔機能発達不全症のサインは、日常の行動の中に隠れています。特に、次の3つの機能に注目して、お子様の様子をチェックしてみてください。

 

A. 【呼吸】に関するサイン

 

  • いつも口がポカンと開いている(口呼吸): 安静にしている時でも、唇が完全に閉じず、口で息をしていることが多い。
  • 寝ている時のいびき・鼻づまり: 睡眠中に息が苦しそうだったり、いびきをかいたりすることがある。
  • 唇の乾燥: 常に口が開いているため、唇が荒れやすい、乾燥している。

 

B. 【食べる・飲み込む】に関するサイン

 

  • 食事に時間がかかる、途中で疲れる: 噛む・飲み込む動作がスムーズでなく、食事が40分以上かかるなど、同年齢の子どもに比べて極端に時間がかかる。
  • 食べこぼしが多い: 口をしっかり閉じられず、食べ物が口からこぼれ落ちやすい。
  • 噛まずに丸呑みする: 食べ物を奥歯でしっかり噛まずに、すぐに飲み込もうとする癖がある。
  • 偏食: 歯ごたえのあるものや、繊維質のものを極端に嫌がる。

 

C. 【話す・発音】に関するサイン

 

  • 滑舌が悪い、舌足らずな話し方: 特に「サ行(すいか→すいた)」「タ行」「ラ行」の音がうまく発音できないことがある。
  • 話すときに舌が前に出る: 発音する際や飲み込む際に、舌が前歯の裏を押したり、歯の間から見えたりする。

これらのサインは、成長途中の「個性」に見えるかもしれませんが、実はお口周りの筋肉や舌の使い方の癖が原因で、将来の歯並びや全身の健康に影響を及ぼす可能性があります。

 

2.口腔機能発達不全症の原因は?

 

口腔機能の発達が遅れる主な原因は、先天的な障害ではなく、環境要因や日常の習慣、筋肉の不調和によるものが多いです。

  • 食生活の変化: 柔らかい食べ物が多くなり、しっかり噛む機会が減っていること。
  • 悪習癖: 長引く指しゃぶりやおしゃぶりの使用、舌で歯を押す癖など。
  • 口呼吸の習慣: 鼻炎などで鼻呼吸がしづらい状態が続き、口呼吸が習慣化してしまうこと。

「口腔機能発達不全症」は、保険適用で診断・治療を行うことができます。気になる症状があれば、まずは歯科医院での精密な検査をおすすめします。

 

STEP 1:問診と詳細な機能検査

 

問診で日常の気になる点を伺った後、専門的な機能検査を行います。

  • 視診・触診: 口唇の閉じ方、舌の位置、飲み込みの動作を観察します。
  • 口唇閉鎖力検査: 唇を閉じる力を専用の機器で測定します。
  • 舌圧検査: 舌の力を測定し、食べる・飲み込む・話す機能の評価に役立てます。
  • 写真撮影・発育評価: お顔やお口の中の写真を記録し、身長・体重などの発育状態も確認します。

 

STEP 2:診断と管理計画の作成

 

検査の結果、診断基準(複数の機能低下)に該当した場合、「口腔機能発達不全症」と診断し、保険適用で「管理計画書」を作成します。

この計画書に基づき、歯科医師と歯科衛生士が連携して、訓練(リハビリ)を進めていきます。

 

STEP 3:口腔筋機能療法(MFT)の開始

 

治療の中心となるのが、「MFT(口腔筋機能療法)」です。これは、お口周りの筋肉や舌を正しく使うための**トレーニング(筋トレ)**です。

  • 訓練内容: 舌の正しい位置を覚える練習、唇をしっかり閉じる練習、正しい飲み込み方を習得する練習など、お子様の症状に合わせて個別に指導します。
  • 通院頻度と期間: 訓練は、週1回~月1回程度の通院で指導を行い、ご家庭で毎日継続していただきます。期間は症状によりますが、半年~1年程度が目安です。

MFTは、お口の機能の「使い方」を根本から改善し、歯並びの悪化を防ぎ、お子様が本来持っている力を引き出すための重要な治療です。


お子様の「食べる・話す・呼吸」の不調和は、歯科医院で改善できることがほとんどです。特に、機能が大きく成長する小児期は、治療の効果が出やすい大切な時期です。

「単なる癖だろう」と見過ごさずに、気になるサインがあれば、ぜひ一度、当院にご相談ください。専門家として、お子様の健やかな未来のためにサポートさせていただきます。

北村歯科医院 ご相談・ご予約はこちらから:【電話番号】 078−681−1582